漫画生活
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イアラ 楳図かずお
イアラ1イアラ2

小学館 ゴールデンコミックス 全6巻 個人的評価 ★★★★★


愛する女が最期に叫んだ言葉、「イアラ」の意味を求めて男は悠久を生きる。
楳図かずお先生が描く、壮大な愛の物語。
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イアラ7


【さなめ】

時は奈良時代、とある村で祖母と暮らす土麻呂。
土麻呂の家は貧しく、よそ者であったため普段村人とは疎遠ですが、
祖母の占い師としての力によってなんとか生活していました。。
その村に小菜女(サナメ)という美しい奴婢(下女)がいつからか暮らし始めます。
いつしか惹かれ合っていく二人だったが、立場上歩み寄れません。
そんな時、大仏建立の為、各地から労働者を集めることになります。
土麻呂も徴収されます。
離れ離れになってしまう土麻呂とサナメ。
過酷な労働に従事する土麻呂。

その過酷な建立の指揮をとる者の中に公麻呂という男がいました。
ある時、門の前に倒れている女を見つけます。
美しい女だと感じた公麻呂は女を助けます。
その女こそ土麻呂を追いかけてきたサナメでした。

土麻呂を牢に閉じ込め、釈放の為サナメに妻になるよう迫る公麻呂。
土麻呂の為それを受け入れるサナメ。
そのサナメの姿を牢から目撃した土麻呂は、サナメの姿が頭に焼き付いて離れません。
労働よりもさらに辛い苦しみが土麻呂にのしかかります。

初めの頃はやさしかった公麻呂でしたが、態度はうって変わり、サナメに辛く当たるようになります。
土麻呂を解放するためには、立派な妻でなければと、頭に浮かぶ土麻呂を打ち消し、妻として勤めます。
しかし、大仏が完成に迫ったある時、公麻呂はサナメに大仏の命を入れるため、人柱になることを迫ります。
土麻呂の為、犠牲になる事を決めたサナメ。
見物人の中に土麻呂を見つけるサナメ。
そして、いよいよその時が・・・


物語の導入部になる第1話。
ここより一人の男が転生する女とイアラの意味を求めて、永い時を生きてゆきます。

【しるし】

時代は進んで文永十一年、蒙古襲来により疲弊した日本。
海で助けた高麗の女トラジと、その女を愛する男、加藤次。
蒙古の回し者ではないかと疑われ虐げられるトラジ。二人は人を避け一緒に暮らし始める。

そして、この時代を行者、土達として生きる土麻呂。
トラジにサナメを感じた土達は接触を図ります。
そこにまた蒙古が襲来して・・・


第2話、ここでもまた男女の出会いと別れが描かれます。
蒙古襲来という事件によって出会い、またそれによって信頼といったものが揺らぐお話。
印象的なラストが沁みます。


【わび】

また時代は流れて、天下が豊臣秀吉の時代。
代々の母娘に渡って、目撃される男。
ついに出会えた男は武家の殿様だった。
男の元に嫁いだ女だったが、戦により男は死んでしまい・・・


第3話、男の執念と、秀吉と利休の確執、
無作為の作為の真理の追究の為に翻弄された女の半生が描かれます。
男の正体はお分かりになると思います。
そこに秀吉と利休の関係を絡めたお話で、これも見事な構成です。


【かげろう】

また月日は流れて。

旅をする男。
道中、草鞋を見つける。
その草鞋からサナメを感じた男は、あとを追います。
次々と女の持ち物を拾っていく男。
あと少しで追いつけるという所で離れてしまいます。
仕方なく泊まった旅籠で老人と出会い、訳を話した男。
老人の名は芭蕉。
芭蕉と共に女のあとを追う事になって・・・


第4話、芭蕉を絡めたお話です。
何故女は逃げるのか?その真実とは。
このお話の最後に男はある真理に気付きます。



【うつろい】

また時代は流れて、明和。
とあるお城にわがままな美しい姫がいた。
やがて姫は夫を持つが、ある時家来の中にいた一人の男に惹かれる。
男と密会を続ける姫だったが、ある時床に伏せってしまう。
姫が伏せった原因とは・・・


第5話、女性の永遠のテーマというものが描かれています。
楳図先生の洗礼にも通ずるものがありますね。



【望郷】

また時は流れて、昭和。

発展していく日本、何不自由なく、極普通の女の子として育った靖子。
しかし、ある時みた古い壺を目にした時から彼女は変わります。
次々と古い壺を集める靖子。
彼女が集める壺にはイアラの文字が刻まれたいたのです。
これを記した男を探す靖子は、新聞に広告を出して・・・


第6話、舞台が現代(この作品が描かれた時は昭和でした)に映ります。
文明が発達しすぎた現在に警鐘をならしています。
これが最終話に繋がっていきます。

【終焉】

時は未来。

化け物のような赤ん坊が生まれた。
人とは違う顔をしているため虐げられる女の子。

とある施設で地球や人類の事を語る男。
そこに倒れている化け物の女の子を見つけて・・・


最終話、ついに男の旅は終わります。その終わりは・・・
イアラの意味と物語の終焉の繋がり方に、楳図先生の巧さを見ました。



男の愛と、それを取り巻く様々な時代の様々な愛の形が描かた傑作だと思います。
力強い愛の形が描かれています。楳図先生の愛に対する考え方が伝わります。
物語の見せ方、言葉の選び方、やはり楳図先生は天才です。
あの傑作、漂流教室やわたしは真悟のような派手な展開こそありませんが、しっかりしっかりと面白いのです。
楳図先生の作品では一般にあまり知られていない作品ですが、是非一読していただきたいですね。

そして、このイアラ本編は2巻で終わりなのです。
では後には何が収録されているかと言いますと、イアラと同じ愛をテーマにした珠玉の傑作短編が読めるのです。
そう、イアラとは本編とこの短編を合わせてイアラなのです。
もうこの短編の数々は本当に素晴らしいんです。
愛、愛、愛、人間の業の故に起こる悲劇。愛の結末。
こんな傑作をいくつも描ける楳図先生はやはり天才です。
まさに大人の読者の為に描かれたイアラ、是非一読を。

短編収録作
【ねむり】【ブラックエンゼル】【雪の夜の童話】【指】
【指輪】【ろうそく】【図明氏のユーモア】【くさり】
【ほくろ】【目】【きずな】【洞】【いろ】【衣】【図明氏の生活】【夏の終わり】
【傷】【耳】【宿】【雪の人】【一つの石】【南へ】【ドアのむこう】
【蟲たちの家】【こがらし】【森の唄】【図明氏のギャング】【砂】【波打ち際の女】【内なる仮面】
【烈願鬼】第一話「遠望の月」第二話「けものの指」第三話「白露」第四話「鉄輪」【さいはての訪問者】【螺旋階段】

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最後に、私の拙い文章で伝わるか分かりませんが、傑作短編の一つを書き出してみます。

【夏の終わり】

イアラ8

夏の海辺、一人の女と二人の男が出会います。
女の名前は世津子。
男の方は、一人はキザで派手な男、糸川比呂志、もう一人は地味で純情な男、山本洋。
三人は仲良くなり、しだいに純情な山本に惹かれいく世津子。
そんな時、糸川から求婚されます。
結婚なんてまだ考えられないという世津子でしたが、頭には山本の顔が浮かびます。
その後も何度も糸川からモーションをかけらますが相手にしない世津子。
それより山本が自分をどう思っているのかが気になります。
そうして三人は夏休みを満喫していきます。一人の不審な男を気にしながら・・・
しかし、夏も終わりに近づき、
世津子は三日後に東京に帰ることを話します。
今夜泊まっているホテルで話そうと世津子を誘う糸川。
世津子は山本とこのまま別れたくない、話がしたいと考えます。
その時山本からホテルに泊まっているのは嘘で、実はとなり村の人間であると教えられます。
そして世津子に手紙を渡す山本。
内容は「愛しています 今夜八時にいつもの海辺で」
その夜、一人海辺で待つ世津子。
イアラ9
そんな時、一人の男が現れます。
そう、夏休み中不審な眼差しを向けていた男です。
襲われ乱暴されてしまった世津子は、その姿を山本に見せまいとその場を去ります。
そこに糸川が現れます。何が起こったか察知した糸川は僕と一緒になれば傷つかずに済むと結婚を迫ります。
傷ついた心と投げやりな気持ちが糸川に負け、結婚した世津子。
山本から引き離すため世津子を連れ、翌日町を出る糸川。
実は襲われたすぐ後、山本がやってきた事、糸川比呂志という名は嘘で、野口源太という事も後で分かったが、
もう何もかも取り返しのつかないものになってしまいました。
東京に住むようになった世津子は、重苦しい日々を過ごしていました。
ある日野口が仕事をクビになります。
生活に困り、家も追い出され辺境の地に追いやられる二人。
そんな時、野口が事故にあい働けなくなります。
医療費を稼ぐため働く世津子。その外出が気に入らず怒る野口。
満足に治療が出来なかった為、一生働けない体になってしまった野口。
それから野口は人が変わったように乱暴になります。
やがて子供ができるが、世津子の過労と栄養失調が原因で、虚弱児として産まれてしまいます。
こうして苦労が積み重なって歳をとっていきます。
そんな時に社長になっている山本の事を新聞で知った世津子。
野口とのあまりにもの違いを感じます。
それから母親の死や虚弱な子供の事、アル中になった夫の面倒と苦しい生活の繰り返しです。
はたしてこれで生きていると言えるのか、私の一生はあの時間違ったのだと考えます。
家を飛び出し、街をさまよい歩きます。
その時、偶然山本に再会します。
あの日海辺で一晩中待った事、君を忘れるのにどんなに苦しんだことを話す山本。
愕然とする世津子。

あの夏を過ごした海辺にやって来た世津子。
あの時待ってさえいれば自分の人生は幸せだったのに。待ってさえいれば。
あの時に戻りたと願いながら崖から身を投げます。
固い岩にぶつかり絶命した、と思ったその時に
なんと時は、あの襲われた後の海辺に戻っていたのです。

山本に見られてしまうと逃げ出そうとする世津子でしたが、逃げてはいけない待たなくてはと思い留まります。
世津子にもなぜか分からないが、強い感情に押されてその場に留まります。
(これまでの記憶はなくなっているんですね)
やがて山本がやってきます。
全てを察知した山本は世津子に結婚を申し込みます。
こうして山本との暮らしが始まります。
山本は大会社のいい役に就き、気立てが良く優しく夫にと幸せな生活を送ります。
しかし、そんな生活は初めだけでした。
突然夜遅くに帰るようになる山本、それをとがめると暴力を振るいます。
外にも女をつくり、他の男には世津子を会わせようとしません。
表面上は地味で純情な男を演じ、実は嘘つきで人を欺くことに長けていた山本。
冷淡な上に移り気で、毎月のお金もろくに渡さなくなっていきます。
やがて子供が生まれますが、成長するにつれ長男も次男も山本そっくりになっていきます。
世津子が貯めたお金を持ち出したり、病気になっても誰も看病してくれません。
のけ者にされ女中扱いされていきます。
そんな時に山本は社長になります。
ホテルで新任のパーティーが行われますが世津子は呼んでもらえません。
家を出、道を歩きながら
それでもパーティー会場に足は向かいます。
そこで山本と話している男を目撃します。
そうあの時、世津子を襲った男でした。
あの男が山本をここまで引き立てた事を聞かされる世津子。
頭の中にある思いが渦巻きます。
その夜、思い切ってそれを山本に尋ねます。
嫌な予感は当たります。
あの男が世津子をものにしたいが為に会社のつてをダシに、海辺に誘い出すよう頼んだのです。
利用されていたことを知った世津子。
その足は海辺の崖に向かい・・・

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